高村軍曹は、自らの班に配属された新兵たちを愛情を持って指導し、連隊一の模範兵に育て上げることで、念願の曹長進級を果たそうと意気込んでいた。彼は軍隊内に蔓延る理不尽な暴力に疑問を抱き、理解と温情をもって新兵に接しようと努める。しかし、元木挽きでおどおどした態度をとる新兵の宮崎には手を焼いていた。ある朝、軍隊生活に馴染めなかった宮崎が兵営から脱走してしまう。懸命の捜索も空しく宮崎は発見されず、高村軍曹はこれによって自身の曹長進級の夢が絶たれたと深く絶望する。この事件を機に、高村軍曹の心に周囲への怒りと苛立ちが鬱積していく。後日、強風のなかで行われた演習中、高村軍曹の号令を聞き逃して間違った動作をした一年志願兵のTに対し、高村軍曹は鬱憤を晴らすかのように衝動的に激しい暴力を振るってしまう。午後の演習にTの姿はなく、高村軍曹は週番士官に呼び出される。そこには耳に包帯を巻き、暴行を告発したTの姿があった。軍法会議や除隊といった自身の完全な破滅を悟った高村軍曹は、極度の絶望と憎悪に駆られ、士官の目の前で再びTに飛びかかっていく。
役割主人公
新兵を熱心に教育し、連隊一の模範兵を育て上げることで曹長への進級を夢見る古参の下士官。部下の脱走を機に自暴自棄となり、暴力事件を起こして破滅へと向かう。
役割触媒・脇役
元木挽きの新兵。軍隊の規律に馴染めず常におどおどしており、やがて兵営から脱走して高村軍曹の運命を大きく狂わせる。
役割犠牲者・触媒
高村軍曹の班に所属する一年志願兵。演習中に突風で号令を聞き逃したことで高村軍曹の理不尽な暴力を受け、鼓膜を破られる。
役割敵役
高村軍曹の隣村出身の連隊副官。個人的な反感から高村軍曹を毛嫌いし、彼を不利な立場に置いている。
自分の班に配属された手のかかる新兵
自分の班の部下だが、理不尽に暴力を振るったことで告発される
自分を毛嫌いし、不当な冷遇をする上官
時代背景
大正時代
場所
兵営および演習地の観音山周辺
国
日本
- 軍隊という閉鎖社会における理不尽な暴力の連鎖と矛盾
- 理想や野心が些細な躓きから瓦解していく精神的崩壊