あらすじ
雪の降る日曜日の午後、27歳の井田は、知人である32歳の相島の家に荷物を運び込み同居生活を始める。井田は周囲から結婚を勧められ、観念的な理想と実生活における「事実」との落差に悩み、強い焦燥感を抱えていた。一方の相島は快活で裕福な身の上でありながら、一つの物事に執着して安住することができない自身の臆病な内面に虚無感を抱いていた。その夜、相島は一人で教会へ赴き、牧師が世俗の中で苦闘する姿を目にする。相島は人生を高みから傍観する自らの態度を深く恥じ、現実の社会の中で見事に生き抜く決意を固める。帰宅後、相島と井田はランプの灯りの下で互いの愛読書や恋愛観について語り合う。相島が自らの内面にある臆病さを率直に告白すると、井田もそれに深く共鳴する。密接な心の交流を持った二人は、互いに急接近したことによる気恥ずかしさと寂しさを感じながら、それぞれの思いを胸に抱いて床に就く。
登場人物4人
相島あいじま
求道者男性32歳富裕層
役割主人公
富裕な家に生まれ留学経験も持つ32歳の青年。快活な外見とは裏腹に、一つのものに執着し安住することができない臆病な内面を抱えている。
井田いだ
求道者男性27歳知識人
役割主人公
相島の家に同居することになった27歳の青年。ギリシャ悲劇など観念的な世界を愛する一方で、切実に実生活の「事実」に触れたいと渇望し、結婚の決断に悩む。
松崎まつざき
求道者男性牧師宗教家
役割脇役・触媒
教会の牧師。科学の時代にあえてキリスト教の伝道者となり、目立たぬ苦闘を続ける姿が相島に強い感銘を与える。
楠くすのき
偽善者男性知識人
役割脇役・対照キャラ
教会に来ていた相島の知人。病気の妹の世話を焼くが、相島からは世渡り上手で偽善的だと皮肉な目で見られている。
人物相関2件
井田相島友人
同居を始めた友人で、互いに深い心の悩みを打ち明け合う仲
相島楠友人
教会の知人だが、相島は内心で彼の振る舞いを皮肉っている
舞台
時代背景
明治時代後期(明治39年頃)
場所
雪深く橇が行き交う町の借家と教会
国
日本
テーマ
- 青年期における観念的な理想と実生活の「事実」との狭間での葛藤と焦燥
- 結婚や恋愛を通じた他者との結びつきへの恐れと憧れ
- 孤独な内面を抱える者同士の深い共鳴と、その後に訪れる気恥ずかしさや寂寥感
キーワード
雪橇ランプ教会事実ギリシャ悲劇青年