あらすじ
ロシアの砲兵旅団がメステーチキという村で野営することになり、将校たちは地主の退役将軍フォン=ラッベクの邸宅でお茶に招かれる。内気で自身の容姿に強いコンプレックスを抱く主人公の二等大尉リャボーヴィチは、屋敷の暗い部屋に迷い込んだ際、暗闇で待ち合わせをしていたらしい見知らぬ女性から熱烈な接吻を受ける。この思いがけない出来事に心を奪われた彼は、相手の女性が誰か想像を巡らせ、これまで味わったことのない甘美な恋の空想に溺れながら野営の日々を送る。数ヶ月後、再び同じ村に立ち寄った旅団とともに、リャボーヴィチはあの女性との再会を夢見て胸を躍らせる。しかし、期待していた使者は来ず、屋敷の庭も静まり返ったままだった。夜の川のほとりに立ち尽くした彼は、接吻がただの偶然の人違いであり、自分の期待も空想も無意味であったことを悟る。人生そのものが不可解で退屈な戯れに過ぎないという深い虚無感に襲われた彼は、同僚たちが結局将軍の屋敷に招かれて出かけたことを知るが、運命への当てつけのようにあえて一人宿舎に残り、眠りにつく。
登場人物4人
リャボーヴィチりゃぼーゔぃち
求道者男性軍人(二等大尉)軍人
役割主人公
内気で猫背、自身の容姿に強いコンプレックスを持つ二等大尉。暗闇で受けた偶然の接吻から甘美な空想に溺れるが、最後には深い虚無感にとらわれる。
フォン=ラッベクふぉん・らっべく
支配者男性60歳地主、退役陸軍中将軍人
役割触媒
メステーチキ村の地主。村に立ち寄った将校たちを自邸の茶会に招く。
ロブィトコろぶぃとこ
放蕩者男性25歳軍人(中尉)軍人
役割脇役・対照キャラ
女性に目がなく、自信に満ちた軽薄な中尉。リャボーヴィチとは対照的な性格で行動的。
メルズリャコーフめるずりゃこーふ
知者男性軍人(中尉)軍人
役割脇役
常に雑誌「ヨーロッパ通報」を読んでいる、物静かで冷静な中尉。リャボーヴィチのロマンチックな話にも現実的な解釈を下す。
人物相関2件
リャボーヴィチロブィトコ同僚
対照的な性格の同僚将校
リャボーヴィチメルズリャコーフ同僚
同じ宿舎に泊まる冷静な同僚将校
舞台
時代背景
19世紀後半
場所
メステーチキという村の地主の屋敷および周辺の野営地
国
ロシア
テーマ
- 偶然がもたらす一時の幸福な空想と、その後に訪れる容赦ない現実への幻滅
- 人生の不可解さと無意味さに対する深い虚無感と諦観
- 内気な自己意識と、誰かに愛されたいという切実な願望
キーワード
接吻メステーチキ暗い部屋藤色の令嬢空想川