人間失格

太宰 治

青空文庫で読む
昭和前期東京日本小説
孤独・疎外道徳・倫理死・無常自我・正体
あらすじ

東北の裕福な家庭に生まれた大庭葉蔵は、人間への極度な恐怖を隠すため、幼い頃から周囲に対して「道化」を演じて生きてきた。中学時代に同級生の竹一にその演技を見破られるが、上京して画学生の堀木正雄と出会い、酒、煙草、女、非合法運動に溺れていく。孤独と生活苦の中、カフェの女給ツネ子と鎌倉で情死を図るが、葉蔵だけが生き残る。起訴猶予となり実家から絶縁された葉蔵は、打算的な身元引受人の渋田の監視下から逃亡し、雑誌記者のシヅ子と同棲して無名漫画家となる。しかし幸福な家庭の空気に耐えられず再び家出し、京橋のバーに居着く。そこで出会った純真な煙草屋の娘ヨシ子と結婚し、酒を断って真面目に働き始めるが、ヨシ子がその「無垢な信頼心」ゆえに出入り商人に犯される事件が起き、葉蔵は深く絶望する。睡眠薬による自殺未遂を起こし、さらに薬屋の未亡人からモルヒネを入手して重度の薬物中毒となる。最後は堀木と渋田の策略によって精神病院に入れられ、自らを「人間失格」と断ずる。その後、東北の温泉地で廃人のように暮らす姿が描かれる。

登場人物10人
大庭葉蔵おおばようぞう
没落者
男性27歳無名漫画家富裕層

役割主人公・語り手

人間に対する極度の恐怖を抱え、道化を演じることで世間を渡ろうとする青年。酒や女、薬物に溺れ、破滅への道を突き進む。

竹一たけいち
知者
男性中学生学生

役割触媒

中学時代の同級生。葉蔵の道化の演技を「わざと」と見破り、お化けの絵を描くことや女に惚れられることを予言する。

堀木正雄ほりきまさお
放蕩者
男性画学生学生

役割対照キャラ・触媒

葉蔵に都会の遊びや左翼運動を教えた悪友。遊び人でありながら世渡りの計算高さと冷酷なエゴイズムを持つ。

ツネ子つねこ
犠牲者
女性女給労働者

役割恋愛対象・犠牲者

銀座のカフェの女給。詐欺罪で服役中の夫を持ち、生活に疲れ果てて葉蔵と鎌倉で情死を図り、一人だけ命を落とす。

渋田しぶた
偽善者
男性40歳書画骨董商商人

役割脇役・対照キャラ

「ヒラメ」と呼ばれる葉蔵の父の出入り業者。葉蔵の身元引受人となるが、世間体を気にする打算的で薄情な態度をとる。

シヅ子しづこ
守護者
女性28歳雑誌記者会社員

役割恋愛対象・協力者

甲州出身の未亡人。家出した葉蔵をアパートに住まわせ、漫画の仕事を斡旋して生活を支える。

シゲ子しげこ
凡人
女性5歳会社員

役割家族

シヅ子の娘。葉蔵を慕うが、無邪気に本当の父親を欲しがっていることを明かし、葉蔵を絶望させる。

ヨシ子よしこ
犠牲者
女性17歳煙草屋の店番商人

役割恋愛対象・家族・犠牲者

京橋の煙草屋の純真な娘。葉蔵と結婚するが、他者を疑わない無垢の信頼心ゆえに出入り商人に犯されてしまう。

薬屋の奥さんくすりやのおくさん
没落者
女性薬屋商人

役割恋愛対象・協力者

足が不自由な未亡人。葉蔵の不幸な境遇に同情してモルヒネを与え、肉体関係を結んでしまう。

マダムまだむ
調停者
女性バーのマダム商人

役割協力者・語り手

葉蔵が入り浸った京橋のバーの女主人。「あとがき」で手記と写真を小説家に渡す。

人物相関7件
大庭葉蔵竹一友人

中学の同級生であり、自分の道化の演技を見破られた恐るべき存在

大庭葉蔵堀木正雄友人

酒や女、都会の遊びを教えてくれた悪友であり、世間の冷酷さを体現する存在

大庭葉蔵ツネ子恋愛

共に鎌倉の海で情死を図ったカフェの女給

大庭葉蔵シヅ子恋愛

同棲して漫画の仕事を世話し、生活を支えてくれた雑誌記者

大庭葉蔵ヨシ子家族

その無垢な信頼心に惹かれて結婚した内縁の妻

大庭葉蔵渋田対立

実家からの仕送りを管理する身元引受人であり、打算的で偽善的な大人の代表

大庭葉蔵薬屋の奥さん恋愛

モルヒネを入手するために関係を持った不具の未亡人

舞台

時代背景

昭和初期(昭和5年〜10年代)

場所

東京(本郷、浅草、銀座、高円寺、築地など)、鎌倉、東北地方

国

日本

テーマ
  • 人間社会への極度な恐怖と、道化による自己隠蔽の苦痛
  • 「世間」の実体と「罪と罰」の概念への疑念
  • 無垢な信頼心や純粋さがもたらす悲劇と破滅
キーワード
道化人間恐怖世間罪と罰無垢の信頼心アルコールモルヒネお化けの絵人間失格