備前天一坊

江見 水蔭

青空文庫で読む
近世中国・四国日本小説
自我・正体愛・恋愛階級・貧富道徳・倫理
あらすじ

万治3年、備前岡山城下の旅籠「半田屋」に、浪人・小笠原金三郎が二人の仲間と共に現れる。彼は名君とされる池田光政の落胤を名乗り、証拠の脇差を武器に池田家への仕官と身分上昇を目論んでいた。欲深い宿屋の主人・九兵衛は金三郎らを歓待し、養女で美人の看板娘・お綾をあてがって自らも一攫千金を狙う。しかしお綾は、密かに思いを寄せる藩の側小姓・野末源之丞を通じてこの騒動を藩へ密告する。やがて、金三郎の愛人で資金源である比丘尼・智栄尼が、金三郎の浮気を疑って半田屋へ乗り込んでくる。計画の破綻を恐れた仲間の医師・奥野俊良は、智栄尼を密かに毒殺し病死として処理してしまう。一方、池田家の家老・池田出羽は、金三郎が本物の落胤である可能性が高いと判断しつつも、名君の醜聞が広まることを恐れる。出羽は源之丞を通じて九兵衛に、「落胤を召し抱えた上で即座に切腹させる内意がある」という嘘の脅しを吹き込む。それを聞いた金三郎一行は仕官の野望を諦め、九兵衛に宿代を巻き上げられながら夜逃げ同然に岡山を去るのだった。

登場人物8
小笠原金三郎おがさわら きんざぶろう
放蕩者
男性浪人(元謡曲・手習の師匠)武士

役割主人公・触媒

池田光政の落胤を名乗り、証拠の品を手に池田家への仕官を目論む浪人。女にだらしなく、脅しに屈してあっけなく逃げ出す。

奥野俊良おくの しゅんりょう
悪党
男性40医師知識人

役割協力者・敵役

金三郎の仲間である旅医者。仕官計画を主導し、不都合な存在となった智栄尼を冷酷に毒殺して病死と偽る。

駒越左内こまごし さない
凡人
男性浪人武士

役割協力者

金三郎と行動を共にする浪人。計画が行き詰まると真っ先に臆病風に吹かれる。

半田屋九兵衛はんだや きゅうべえ
道化
男性宿屋主人商人

役割脇役

欲深い旅籠の主人。落胤騒動を利用して一攫千金を目論むが、藩からの脅しに怯えて保身に走る。

お綾おあや
犠牲者
女性宿屋の看板娘商人

役割恋愛対象・触媒

九兵衛の養女で評判の美人。養父母に出世の道具として利用されるが、恋人の源之丞に落胤騒動を密告する。

野末源之丞のずえ げんのじょう
守護者
男性御側小姓武士

役割協力者・対照キャラ

お綾と相思相愛の若侍。お綾からの密告を受け、池田家の平穏を守るために家老と連携して動く。

智栄尼ちえいに
狂信者
女性41比丘尼宗教家

役割対照キャラ・犠牲者

金三郎の愛人であり、仕官計画の資金源。金三郎の浮気を疑って岡山まで追って来るが、俊良に毒殺される。

池田出羽いけだ でわ
知者
男性家老武士

役割敵役・触媒

池田家の名家老。金三郎が本物の落胤であると察しつつも、藩政と主君の体面を守るため策を弄して一行を追い払う。

人物相関5
小笠原金三郎お綾恋愛

美貌に惹かれ、強引に関係を持とうとする

智栄尼小笠原金三郎恋愛

愛人でありパトロン。激しく執着し浮気を責める

お綾野末源之丞恋愛

相思相愛で、密かに逢瀬を重ねる関係

奥野俊良智栄尼対立

計画の破綻を恐れ、口封じのために毒殺する

池田出羽小笠原金三郎対立

主君のスキャンダルを隠蔽するため、策略を用いて追い払う

舞台

時代背景

江戸時代前期(万治3年頃)

場所

備前国岡山城下(西中島の旅籠・半田屋など)

日本

テーマ
  • 大名の裏面とスキャンダルの隠蔽
  • 身分上昇を企む者たちの滑稽さと末路
  • 人間の欲深さと愛憎が生む悲劇
キーワード
落胤証拠の脇差半田屋毒殺切腹