清朝末期から辛亥革命にかけての中国の架空の村・未荘。日雇い労働者の阿Qは、無学で貧しく家もないが自尊心だけは異常に高く、喧嘩に負けたり屈辱を受けたりしても頭の中で自分に都合よく解釈する「精神的勝利法」で日々をやり過ごしていた。ある日、地主の趙太爺と同姓だと吹聴して殴られた阿Qは、かえって村人から一目置かれるようになる。しかし、趙家の女中である呉媽に突然言い寄って騒ぎを起こしたことで村中から袋叩きに遭い、全財産と仕事を失って未荘に居られなくなる。城内へ出稼ぎに出て泥棒の片棒を担いで小金を稼いだ阿Qが村に戻ると、一時的に村人は彼をちやほやするが、素性が知れると再び距離を置かれる。やがて辛亥革命の波が未荘にも押し寄せ、村の権力者たちは保身のために自ら革命党を名乗り始める。阿Qも便乗して革命党員になろうと妄想を膨らませるが、日頃から軽蔑していた「偽毛唐」に冷たく追い払われ、参加することすら許されなかった。ある夜、趙家が本物の略奪団に襲撃される。阿Qは遠巻きに見ていただけだったが、見せしめと点数稼ぎを目論む役人や権力者たちによって略奪の首謀者として濡れ衣を着せられる。字も読めない阿Qは状況を理解できないまま調書に丸印を書かされ、市中引き回しの末に身代わりとして銃殺される。阿Qの死に対し、村人は「殺されたのだから悪い奴だったのだろう」と無関心に納得し、見物人はあっけない最期に不満を漏らすだけであった。
役割主人公・犠牲者
定職も家もなく、未荘の土穀祠に寝泊まりする男。屈辱を受けても「精神的勝利法」で頭の中で勝ちに変換する自己欺瞞を持つが、最後は身に覚えのない略奪の罪で処刑される。
役割敵役
未荘の権力者であり地主。阿Qが同姓を名乗ったことに激怒して制裁を加えるなど、権威を笠に着て村人を支配している。
役割敵役
趙太爺の息子。科挙に合格したエリートだが、革命の波が訪れると保身のために即座に辮髪を巻き上げ、革命党にすり寄る。
役割敵役
錢太爺の息子。日本への留学経験があり辮髪がないため、阿Qから「偽毛唐」と呼ばれ忌み嫌われる。辛亥革命に乗じて自由党員を名乗る。
役割触媒・犠牲者
趙家で働く未亡人。阿Qに突然関係を迫られて泣き叫び、結果として阿Qが村から孤立し没落していくきっかけを作る。
役割対照キャラ
阿Q以上に貧弱な体格の日雇い労働者。阿Qが趙家から追放された後、彼の仕事を奪う形になり、激しい取っ組み合いの喧嘩をする。
役割敵役
城内で絶大な権力を持つ科挙の合格者。革命を恐れて未荘に家財を避難させる。後に見せしめとして阿Qの処刑に関与する。
阿Qを見下し徹底的に搾取・抑圧する村の権力者
阿Qが唐突に関係を迫り、大騒動を引き起こした相手
阿Qが外国かぶれとして嫌悪しつつも、革命参加を懇願して拒絶される相手
阿Qの仕事を奪った同じ境遇の底辺労働者でありライバル
時代背景
清朝末期から辛亥革命期(宣統三年)
場所
架空の村・未荘、およびその近郊の城内
国
中国
- 阿Qの「精神的勝利法」を通じた現実逃避と自己欺瞞
- 辛亥革命前後における農村の権力構造の無変化と権威の腐敗
- 底辺層同士の争いと弱者に対する無慈悲な搾取
- 民衆の無知や事大主義がもたらす理不尽な悲劇