葉書

石川 啄木

青空文庫で読む
明治日本小説
道徳・倫理孤独・疎外自我・正体
あらすじ

××村の小学校で代用教員を務める甲田は、父の死により進学を断念して郷里に戻り、目的を見失った鬱屈した日々を送っていた。彼は無能な校長の田辺や老獪な訓導の此木田らと共に、児童の出席歩合をごまかす事勿れ主義に染まっている。一方で同僚の女教員・福富を密かに意識していたが、クリスチャンでありながら打算的な彼女の振る舞いに複雑な思いを抱いていた。ある日、学校に中学生を名乗る乞食姿の若い男・高橋次郎吉が現れる。親の死で郷里へ帰る途中だという男の身の上話を聞いた甲田は、自らの境遇を重ねつつ、同情と少しの虚栄心から彼に五十銭を貸し与える。しかし、男はその日のうちに隣町へ向かうと言いながら、実際には村の木賃宿に泊まり、歩くのをやめていたことが発覚する。後日、男から英語交じりの滑稽で仰々しい礼状の葉書が届き、それを見た此木田から無邪気な同情を嘲笑された甲田は、自分の軽薄な施しと自己満足を激しく後悔し、言葉にならない苛立ちに苛まれるのだった。

登場人物5
甲田こうだ
没落者
男性22小学校の代用教員知識人

役割主人公

進学を断念して村の代用教員となった青年。現状に目的を見出せず鬱屈とした日々を送り、事勿れ主義に流されつつある。

福富ふくとみ
偽善者
女性23小学校の教員知識人

役割恋愛対象・対照キャラ

クリスチャンで讃美歌を好む女教員。甲田の密かな意識の対象だが、保身から不正にも同調する打算的な一面を持つ。

田辺たなべ
凡人
男性小学校の校長知識人

役割脇役

人の良い性格だが無能な校長。保身のために児童の出席歩合をごまかすなど、教育に不熱心な態度を見せる。

此木田このきだ
道化
男性小学校の訓導知識人

役割脇役

宿直代をせこく稼ぐなど老獪で打算的な老教員。甲田の感傷的な行動を容赦なくからかい、彼に苛立ちを与える。

高橋次郎吉たかはしじろきち
放浪者
男性20学生(自称)学生

役割触媒

乞食のような身なりで学校に現れた若者。親の死で郷里へ帰る途中だと語り、甲田から同情で金を引き出す。

人物相関3
甲田福富恋愛

同僚の女教員。甲田は彼女を密かに意識し、妄想の対象としているが、その打算的な態度には複雑な思いを抱いている

甲田田辺同僚

事勿れ主義の校長。甲田は彼を内心軽蔑しつつも、現状の体制に従っている

甲田此木田同僚

老獪な訓導。彼の容赦ないからかいや振る舞いに、甲田は度々苛立ちを覚える

舞台

時代背景

明治時代後期

場所

地方の寒村(××村)の小学校

日本

テーマ
  • 田舎の知識人の鬱屈と自己欺瞞
  • 軽薄な同情と偽善の滑稽さ
  • 事勿れ主義と倫理の麻痺
キーワード
出席簿歩合代用教員讃美歌乞食学生五十銭葉書