土城廊

金 史良

青空文庫で読む
昭和前期海外日本小説
階級・貧富死・無常孤独・疎外自然・風土
あらすじ

朝鮮・平壌の大同江畔にある貧民窟「土城廊」には、土幕(土小屋)に住む最下層の人々が暮らしていた。元奴僕の純朴な男・丁元三は、荷担ぎ人(支械軍)として働きながら、自分に住処を世話してくれた病弱な同僚の先達とその妻の生活を実質的に養っていた。先達は稼ぎの少なさから妻と絶えず衝突し、自分を援助する元三をも憎むようになる。一方、元三は先達の妻に密かな恋心を抱き、彼女と共に貧民窟を抜け出す新しい生活を夢見るようになっていた。ある日から大雨が降り続き、大同江が氾濫して土城廊は濁流に呑まれそうになる。生活苦に追いつめられた先達は、同郷の炳吉の口利きで自身の体力を超えた倉庫労働に無理に参加するが、過労のため足場から転落して無惨な死を遂げる。先達の死を目の当たりにした元三は、残された先達の妻を自分が守り抜こうと決意を固める。しかしその直後、ついに土城廊の地盤が荒れ狂う濁流によって決壊する。避難しようと焦った元三は足を滑らせて泥水に転落し、先達の妻や炳吉が駆けつけて救おうとするも虚しく、深い渦の中へと呑み込まれて命を落とすのだった。

登場人物6
丁元三
犠牲者
男性57支械軍(担荷人)労働者

役割主人公・犠牲者

山奥の奴僕から自由の身となり平壌へ出てきた純朴な男。先達一家の生活を支え、先達の婦に想いを寄せるが、大水の中で濁流に呑まれて命を落とす。

先達
没落者
男性支械軍(担荷人)労働者

役割脇役・対照キャラ

元三に土幕を世話した同僚。小作農から転落して体を壊しており、稼ぎの少なさから妻と不和になっている。無理をして臨んだ倉庫の仕事で転落死する。

先達の婦
没落者
女性労働者

役割脇役・恋愛対象

先達の妻。貧しい生活に苛立ち、夫を激しく罵りつつも元三からの援助に依存している。夫の死に悲嘆に暮れる。

炳吉
守護者
男性組合の労働者労働者

役割脇役・協力者

先達と同じ村の出身。没落した先達を気にかけて倉庫の仕事を世話し、彼の最期までを見守る。

徳一老人
犠牲者
男性その他

役割脇役

息子を強盗の濡れ衣で投獄され、妻は狂人となってしまった土城廊の老人。絶望と理不尽な運命に憤っている。

吃男どもりおとこ
狂信者
男性その他

役割脇役

過去に清兵に家族を殺された元百姓。上帝教を信仰して奇怪な呪文を唱えており、嵐の夜に狂乱して自らの土幕を破壊する。

人物相関4
丁元三先達の婦恋愛

密かに恋心を抱き、彼女との新しい生活を夢見て援助している

丁元三先達同僚

土城廊での住処を世話してくれた恩人であり、同じ支械軍(荷担ぎ人)の同僚

先達先達の婦家族

夫婦だが、貧困と先達の不甲斐なさにより関係が冷え切っている

炳吉先達友人

同郷の出身であり、窮地の先達に倉庫労働の口を利く

舞台

時代背景

日清戦争から約50年後(1940年代)

場所

平壌の大同江畔にある貧民窟・土城廊

朝鮮

テーマ
  • 最底辺の貧困層の悲惨な生活と絶望的な環境
  • 容赦のない自然災害(洪水)の圧倒的な暴力
  • 過酷な日常の中で芽生える微かな希望とその残酷な挫折
キーワード
土城廊土幕支械軍大同江洪水貧困