扉は語らず

小舟 勝二

青空文庫で読む
昭和前期東京日本小説
道徳・倫理死・無常運命・宿命
あらすじ

「私」は最近知り合った元S百貨店店員の男から、6年前に同百貨店で起きた装飾工墜落死事件の隠された真相を聞かされる。事件当夜、仕入部員だった男は退勤後に五階の倉庫で居眠りをしてしまい、内側から施錠されて出られなくなってしまう。夜になり空腹に耐えかねた彼は、無理やり倉庫の扉を押し開けた。その時、扉の外の売場では大がかりな装飾工事が行われており、扉の前に立てかけられていた巨大な丸太が押し出されて倒れ込んだ。外で作業をしていた若い装飾工は、倒れてきた丸太を避けようとしてバランスを崩し、六十フィート下の階へ転落死してしまう。男は自分が死の原因を作ったことを誰にも気づかれず、翌朝密かに倉庫を抜け出した。彼は自らの行動を単なる偶然の交わりだと見なし、今なお一切の良心の呵責を感じていないと平然と語る。

登場人物3
ぼく
偽善者
男性元S百貨店洋家具仕入部員会社員

役割主人公・語り手・触媒

6年前のS百貨店での装飾工墜死事件の真の加害者。自身の不用意な行動で人を死なせながら、それを単なる偶然と見なし良心の呵責を一切感じていない。

若い装飾工わかいそうしょくこう
犠牲者
男性装飾工労働者

役割犠牲者

都市美術社に雇われS百貨店で装飾工事をしていた青年。「僕」が扉を開けたことで倒れてきた丸太を避けようとし、60フィート下へ転落死する。

わたし
凡人
その他・不明

役割語り手

「僕」と最近知り合い、彼から6年前の墜死事件の恐るべき真相を打ち明けられる聞き手。

人物相関1
友人

最近知り合った相手であり、彼から隠された事件の顛末を聞かされる

舞台

時代背景

昭和初期(6年前の9月30日夜)

場所

東京のS百貨店(五階洋家具売場附属倉庫および店内)

日本

テーマ
  • 偶然の連鎖がもたらす致命的な悲劇
  • 罪悪感の欠如と自己正当化
  • 都市生活における死角と人間の無責任さ
キーワード
S百貨店洋家具売場附属倉庫丸太装飾工