あらすじ
大作家を目指しながらも臆病な性格に絶望していた20歳の学生である「私」は、冬休みに海岸の温泉地を訪れる。宿泊先の旅館でつい見栄を張り、実在の新進作家の名を騙って滞在する。ある日、喫茶店で断髪の少女・雪に出会い、初めての酒に酔いしれながら彼女に惹かれていく。雪もまた、「私」を憧れの新進作家本人だと信じ込み、二人は夜の旅館で密かに結ばれる。翌朝、裏山を散策する中で、雪が愛しているのは自分自身ではなく「新進作家」という虚像であることに気づいた「私」は、嘘が露見する恐怖と己の虚栄心から、断崖絶壁から雪を突き落として殺害する。たまたま居合わせた木こりには崖の高さによる錯覚が働き、主人公の犯行とは疑われず事故として処理される。5年後、騙った新進作家は大作家へと出世する一方で、完全犯罪を成し遂げた「私」は未だに作品を一つも書けず、殺した雪への思慕と罪の意識に苦しみ続けている。
登場人物2人
私わたし
偽善者男性20歳学生学生
役割主人公・語り手
大作家になることを夢見る一高の学生。裕福な呉服商の息子だが、臆病な性格に劣等感を抱いている。旅先で見栄から新進作家を騙り、取り返しのつかない罪を犯す。
雪ゆき
犠牲者女性喫茶店の店員労働者
役割恋愛対象・犠牲者
喫茶店「いでゆ」で働く断髪の美しい少女。新進作家の愛読者であり、「私」をその作家本人だと信じ込んで愛情を寄せる。
人物相関2件
私雪恋愛
一目惚れして一夜を共にするが、己の嘘が露見することを恐れて殺害してしまう相手
雪私恋愛
憧れの新進作家本人だと信じ込み、純粋な愛を捧げる相手
舞台
時代背景
大正時代から昭和時代初期にかけての正月
場所
海岸の温泉地(熱海周辺)、旅館「百花楼」、喫茶店「いでゆ」、裏山の断崖
国
日本
テーマ
- 虚栄心と自己顕示欲が引き起こす悲劇
- 偽りの身分による愛と破滅
- 完全犯罪の成立と内面的な罪の意識
キーワード
新進作家温泉地原稿ウイスキー虚栄断崖錯覚