語り手は、幼少期から自宅にある二つの草双紙、為永春水の『絵入教訓近道』と式亭三馬の蔵書印がある『赤本智恵鑒』について考察を巡らせる。『絵入教訓近道』は、イソップ寓話を戯作風の文章と日本の田園生活に合わせた挿絵で翻案した教訓書であり、天保十四年に没した春水の大衆向け絶筆とも言える作品である。一方の『赤本智恵鑒』は明和七年の出版で、閑人である「先生」が鍼医の巧案にそそのかされて「猿蟹上人」と名乗り、赤本を用いて人々に教訓を与える物語である。作中では、剣術の師匠である万能斎一心が愚息の一学を改心させるために相談に訪れるが、最後は鉛の偽金を謝礼として置いて逃げるなど、教訓の中にも滑稽さが描かれている。語り手はこれらの希少な書物の内容を紹介し、その歴史的および文学的な特徴について考察を結ぶ。
役割語り手・主人公
家に伝わる二つの草双紙を所蔵しており、それらの内容や文学史的価値について閑談を交えながら考察を巡らせる人物。
役割主人公
作中作『赤本智恵鑒』の主人公。赤本を愛読する閑人だったが、巧案の画策で文殊菩薩直伝の智恵授けを標榜し、人々に教訓を与えるが最後はからかわれる。
役割協力者・触媒
作中作『赤本智恵鑒』の登場人物。胸に一物ある鍼医で、先生を猿蟹上人に仕立て上げる画策をする。
役割脇役
作中作『赤本智恵鑒』の登場人物。浪人で剣術の道場を開く。息子に手を焼き、猿蟹上人に相談するが謝金を鉛でごまかす。
役割脇役
万能斎一心の息子。生来懦弱で父親を悩ませているが、猿蟹上人の赤本を使った説教で改心する。
先生を猿蟹上人として売り出すよう画策し、入れ知恵をする
出来の悪い息子
息子のことで相談を受けるが、最後に鉛の偽金を謝礼として渡して欺く
時代背景
1939年(昭和14年)頃および江戸時代(作中作)
場所
語り手の書斎
国
日本
- 草双紙を通じた江戸文学の教訓と滑稽
- イソップ寓話の和風翻案
- 古い書物を通した歴史的思索