藪の鶯

三宅 花圃

青空文庫で読む
明治東京日本小説
道徳・倫理階級・貧富愛・恋愛
あらすじ

明治の鹿鳴館時代。欧州留学から帰国した子爵家の養子・篠原勤は、表面的な西洋風俗の模倣を嫌い、道徳と実学を重んじていた。一方、彼の義妹であり許婚の浜子は西洋かぶれで、毎晩のようにダンスや夜会に興じていた。勤は養父の死を機に、価値観の合わない浜子との結婚を白紙に戻す。勤は養父母への恩義から浜子に財産の多くを譲り、彼女が気に入っていた官吏の山中正と結婚させて独立させる。しかし、山中は裏で元泥水稼業の情婦・お貞と通じており、二人は結託して浜子の財産や家屋敷をすべて奪い取り、逃亡してしまう。騙された浜子はすべてを失い、深い悲しみと後悔に暮れる。一方、没落士族の娘である松島秀子は、貧しい長屋暮らしの中で毛糸編みの内職をして弟・葦男の学費を稼ぎ、自身も独学で和歌や学問を修める貞淑で愛情深い女性であった。友人・宮崎一郎の紹介で秀子と出会った勤は、彼女の奥ゆかしさと教養に深く惹かれる。宮崎の仲介により勤と秀子は結ばれ、祝福の中で結婚の宴が開かれる。のちに弟の葦男も苦学の末に大学で工学を修めて立派な技術者となり、勤の友人たちもそれぞれ堅実で幸福な人生を歩むのだった。

登場人物9
篠原浜子しのはらはまこ
没落者
女性18令嬢貴族

役割対照キャラ・犠牲者

西洋かぶれの子爵令嬢。ダンスや夜会に興じていたが、山中とお貞に騙されて財産を失い深く後悔する。

篠原勤しのはらつとむ
求道者
男性25技芸士貴族

役割主人公

英国留学から帰国した子爵家の養子。表面的な西洋風俗を嫌悪し、実学と道徳を重んじる堅実な青年。

山中正やまなかただし
偽善者
男性28官吏官僚

役割敵役

如才なく立ち回る官吏。浜子に取り入り結婚するが、裏でお貞と通じており、浜子の財産を奪って逃亡する。

お貞おさだ
悪党
女性30待合茶屋の女将商人

役割敵役

山中の情婦であり、元泥水稼業の女。裏で山中を操り、浜子から家屋敷や財産を騙し取る悪知恵に長けた人物。

松島秀子まつしまひでこ
守護者
女性17内職(毛糸編み)武士

役割恋愛対象・対照キャラ

没落士族の娘。両親を亡くし、弟の学費を稼ぎながら自らも学問や和歌を学ぶ貞淑で奥ゆかしい女性。のちに勤の妻となる。

松島葦男まつしまあしお
求道者
男性15学生学生

役割家族・脇役

秀子の弟。姉の献身に支えられて苦学し、のちに大学で工学を修めて立派な技術者となる。

宮崎一郎みやざきいちろう
調停者
男性大学の助教知識人

役割協力者

勤の友人で文学士。松島姉弟のよき理解者であり、勤と秀子を引き合わせて仲人を務める。

服部浪子はっとりなみこ
凡人
女性女学生学生

役割脇役・恋愛対象

温順で控えめな女学生。のちに宮崎一郎の妻となる。

斎藤さいとう
道化
男性化学の教員知識人

役割脇役・触媒

勤や宮崎の友人で学校教員。おしゃべりで空気を読まない発言も多いが、物事の核心を突くこともある。

人物相関7
篠原勤篠原浜子家族

養父母が決めたかつての許婚だが、価値観の違いから離縁する

山中正篠原浜子恋愛

浜子を騙して偽装結婚し、財産を奪う

お貞山中正恋愛

山中を裏で操る内縁の妻・情婦

篠原勤松島秀子恋愛

浜子と離縁後、貞淑で奥ゆかしい秀子に惹かれ妻に迎える

松島秀子松島葦男家族

弟の学費を内職で稼ぎ、懸命に支える姉

宮崎一郎篠原勤友人

同窓の友人で、秀子との仲人を務める

宮崎一郎服部浪子恋愛

のちに妻に迎える

舞台

時代背景

明治時代前期(鹿鳴館時代)

場所

東京(駿河台、滝の川、芝・紅葉館など)

日本

テーマ
  • 西洋化に伴う表面的な風俗の模倣への批判
  • 女性の教育と自立・貞淑のあり方
  • 実直な生き方と虚飾に満ちた生き方の対比
キーワード
鹿鳴館洋服踏舞毛糸編み道徳和歌西洋かぶれ