主人公の太田豊太郎は、エリート官僚としてドイツのベルリンへ留学する。現地で自らの自我に目覚め、型にはまった生活に疑問を抱くようになる中、貧しく美しい舞姫のエリスと出会い恋に落ちる。豊太郎の行動は同郷の人々から官長に報告され、彼は免官処分を受ける。豊太郎とエリスは同棲を始め、豊太郎は通信員として働きながら貧しいながらも幸せな生活を送る。やがてエリスは豊太郎の子を身ごもる。しかし、親友の相沢謙吉の紹介で日本から来た天方大臣と出会った豊太郎は、自らのキャリアへの未練と相沢からの強い忠告に押され、エリスと別れて日本へ帰国する約束をしてしまう。ある日、相沢の言葉から豊太郎が帰国して自分を捨てることを悟ったエリスは、大きなショックから重い精神病を患い発狂してしまう。豊太郎は深い自責の念を抱えながらも、狂気となったエリスと見知らぬ子を残して大臣と共に日本へ帰国する。物語は、帰国中の船上での豊太郎の回想と、相沢に対する複雑な憎悪の告白として結ばれる。
役割主人公・語り手
ドイツに留学した優秀なエリート官僚。自我に目覚めてエリスと愛し合い免官となるが、最終的に立身出世と友人の忠告に流されて彼女を裏切ってしまう優柔不断な青年。
役割恋愛対象・犠牲者
貧しい仕立物師の娘で、劇場で働く美しく純真な少女。豊太郎を深く愛し子を身ごもるが、彼が帰国を決断した事実を知り精神を崩壊させてしまう。
役割協力者・触媒
豊太郎の親友で天方大臣の秘書官。免官後の豊太郎を助け復職の道を開くが、彼にエリスとの関係を断つよう強く迫り、悲劇の引き金となる。
役割脇役
ドイツを訪れた日本の高官。豊太郎の語学力と才能を高く評価し、再び国のために働くよう帰国を促す権威の象徴。
役割家族・脇役
夫を亡くし貧困にあえぐエリスの母親。豊太郎とエリスの同棲生活を共にし、発狂した娘の看病にあたる。
恋人関係であり同棲するが、自らのキャリアのために最終的に見捨てる
自身の窮地を救ってくれた恩人であると同時に、エリスを狂気に追いやった一因として憎悪の対象
親友の将来と出世の妨げとなる障害として見なし、豊太郎から引き離そうとする
豊太郎の能力を利用し、再び国家の枠組みに引き戻す有力者
共に貧困を生き抜く母娘
時代背景
明治21年(1888年)頃
場所
ドイツのベルリン市街(ウンテル・デン・リンデン、クロステル街など)
国
ドイツ、ロシア
- 国家への義務と個人の自由および愛情の間の深い葛藤
- 近代化の中で自我に目覚めた青年の自己決定能力の欠如と挫折
- 個人の優柔不断さと保身が他者に修復不可能な傷を与えるという倫理的罪