一匹の名もなき猫が、中学校の英語教師である珍野苦沙弥の家に拾われ、居候として暮らすようになる。猫の視点から、書斎に籠り精神修養と称して昼寝や無駄な思索にふける主人や、その家に集まる迷亭、水島寒月、越智東風、八木独仙といった一癖も二癖もある知識人たちの滑稽な日常と議論が描かれる。ある日、近所の有力な実業家・金田の妻である鼻子が、娘の富子と寒月の縁談の件で苦沙弥の家を訪れる。苦沙弥と迷亭は鼻子の傲慢な態度を嫌って彼女を冷遇し、縁談に反対する。激怒した金田家は、車屋の妻や探偵、さらには裏にある中学校「落雲館」の生徒たちをそそのかし、苦沙弥に対して執拗な嫌がらせを行う。苦沙弥は怒りに駆られて生徒たちと抗争を繰り広げるが、多勢に無勢であり、さらには旧友の鈴木藤十郎が金田の手先として説得に現れるなど、金と権力を持つ実業家の勢力に次第に追い詰められていく。一方で、寒月は奇妙な博士論文の研究を諦め故郷から妻を連れて帰り、元書生の多々良三平は富子との結婚を決めるなど、周囲の人間たちの状況も次第に変化していく。ある秋の晩、人間たちの利己主義や神経衰弱について思いを巡らせた猫は、飲み残しのビールを舐めて酔っ払い、誤って水甕に落ちてしまう。猫はもがくのをやめて自然に身を任せ、不可思議な太平の境地の中で自らの死を受け入れていく。
役割主人公・語り手
珍野家に住み着いた名無しの猫。人間社会の愚かさや滑稽さを鋭い観察眼で批評し、最期は飲み残しのビールを舐めて水甕に落ち、不可思議な太平の境地の中で死んでいく。
役割家族・対照キャラ
吾輩の飼い主。胃弱で偏屈な性格をしており、書斎にこもって読書や昼寝ばかりしている。金権主義の実業家を嫌い、意地を張って対立する。
役割脇役・触媒
苦沙弥の友人。軽薄で飄々とした性格をしており、ほら話を吹いては人々をからかって楽しんでいる。
役割脇役・恋愛対象
苦沙弥の元教え子で大学院生。首縊りの力学やガラス玉磨きなど奇妙な研究に熱中している。金田家の令嬢から想いを寄せられるが、本人は気にしていない。
役割敵役
向横丁に住む傲慢な実業家。金と権力に物を言わせ、妻を冷遇した苦沙弥に対して落雲館の生徒などを使い執拗な嫌がらせを行う。
役割敵役
金田の妻。巨大な鼻を持つ傲慢な女性で、娘の縁談の件で苦沙弥の家を訪れるが、軽くあしらわれたため苦沙弥を敵視する。
役割脇役
寒月の友人で新体詩人。純粋で真面目な性格だが、芸術至上主義のあまりどこか常識からずれた言動をする。
役割脇役
苦沙弥の旧友。禅に通じており、消極的修養の重要性を説くが、迷亭からはエセ悟りだとからかわれている。
役割協力者・触媒
苦沙弥の学生時代の友人で実業家肌の男。世渡り上手で、金田の依頼を受けて苦沙弥の説得に訪れる。
役割脇役
苦沙弥の元書生。実業家を志す徹底した現実主義者で、最終的に金田の娘である富子との結婚を決める。
飼い猫と飼い主
学生時代からの友人で、よく無駄話をする
かつての教え子であり、現在も出入りして交流がある
傲慢な態度を不快に思い、縁談の相談に訪れた彼女を冷遇する
妻を冷遇された報復として様々な嫌がらせを仕掛ける
旧友だが、金田の依頼を受けて説得や偵察に訪れる
時代背景
明治時代後期(日露戦争の時期)
場所
東京の珍野邸とその周辺
国
日本
- 人間社会と近代文明の滑稽さへの風刺
- 知識人の自意識過剰とエゴイズム
- 拝金主義と俗物性への批判
- 自然体で生きることの難しさ