「マルテ・ロオリッツ・ブリッゲの手記」から

リルケ ライネル・マリア

青空文庫で読む
明治海外ドイツ小説
死・無常孤独・疎外自我・正体家族・血縁
あらすじ

「私」はパリでの生活の中で、街に溢れる病気や恐怖、死の匂いを嗅ぎ取り、圧倒的な孤独に苛まれている。事物の本質を捉えようと「見る稽古」を始めた「私」は、人々が顔を使い捨てたり顔を持たずに歩いたりする異様な光景や、外界の事象が自己の内部にまで侵入してくる感覚に戸惑い、自身が変容してしまったと感じる。パリの病院では工場のように画一的な死が大量生産され、人々は既製の死を与えられていることに「私」は絶望する。その対極として、「私」は故郷ウルスガァルでの祖父クリストフ・デトレェヴ・ブリッゲの壮絶な死を回想する。祖父は自身の内に独自の恐ろしい死を育んでおり、その死は邸の人間や動物、村人をも震え上がらせるほどの威厳と誇りに満ちていた。「私」は、かつて人々が固有の死を持っていた時代を懐かしみつつ、家も財産も失った現在の寄る辺ない生活に苦悩する。それでも「私」は、パリの公園や通りで見かける何気ない風景の調和に心を動かされながら、恐怖に抗うように手記を書き進めていく。

登場人物2
わたし
求道者
男性知識人

役割主人公・語り手

パリに滞在しながら手記を書き綴る孤独な人物。事物を深く知覚するための「見る稽古」を実践し、大都市における大量生産の死や人々の虚無的な姿を観察して、自己の内面の変容と恐怖に向き合っている。

クリストフ・デトレェヴ・ブリッゲくりすとふ・でとれぇゔ・ぶりっげ
支配者
男性侍従貴族

役割家族・対照キャラ

「私」の祖父であり、ウルスガァルの古い邸の主。自らの内に凶悪で独自の巨大な死を孕み、死の床にあっても邸内の人間や動物、村全体を恐怖で震え上がらせ、王のように君臨した。

人物相関1
クリストフ・デトレェヴ・ブリッゲ家族

祖父。大量生産される現代の死とは対極にある、強烈で独自の死を遂げた人物として回想される

舞台

時代背景

20世紀初頭

場所

フランスのパリ(トゥリエ街、聖ジャック街など)、および丁抹(デンマーク)のウルスガァル

フランス、デンマーク

テーマ
  • 大都市における人間の孤独と大量生産される画一的な死
  • 「見る稽古」を通じた知覚の深化とそれに伴う自己の喪失や変容
  • 血脈に連なる祖父の独自の死と、かつて存在した死の尊厳
  • 死や恐怖に包まれながらも垣間見える日常の調和と美
キーワード
見る稽古恐怖沈黙大量生産ウルスガァル