あらすじ
東京郊外の女学校で体操教師をしている勝子は、ある冬の夕暮れに銀座へ買い物に出かけた際、青白い顔をした見知らぬ男に跡をつけられる。有楽町駅前で声をかけてきたその男は宮地製氷所の経営者・宮地銀三と名乗り、勝子の顔が自分の幻覚に現れる未来の妻にそっくりだと告げる。この出来事の翌日、銀三は突如として行方不明となる。三日後、親友で共同経営者の暮松からの通報により、常川警部らが工場を捜索に訪れる。暮松によれば、銀三は最近製氷に異常な情熱を注ぎ、発狂状態にあったという。銀三の豪華な私室を調べていた警部は、消灯中にもかかわらず電力量計が動いていることに気づき、絨毯の下から地下へ続く隠し階段を発見する。地下の暗闇の奥にある重い扉を開けると、そこには強い橙色の光に照らされた巨大な氷の塊があった。氷の中には唐草模様の草花と共に、勝子と思われる全裸の女が美しい姿勢のまま氷漬けにされており、その傍らでは燕尾服を着た銀三が微笑を浮かべて服毒死していた。
登場人物4人
勝子かつこ
犠牲者女性体操教師知識人
役割主人公・犠牲者
郊外の女学校で体操教師を務める独身女性。純潔を重んじ、銀座で出会った狂気の男に魅入られてしまう。
宮地銀三みやじぎんぞう
狂信者男性宮地製氷所経営者富裕層
役割敵役
製氷所の経営者。製氷に没頭するあまり精神に異常をきたし、自らの幻影の女に似た勝子に異常な執着を抱く。
暮松くれまつ
守護者男性宮地製氷所共同経営者富裕層
役割協力者・脇役
銀三の昔からの親友であり事業のパートナー。狂気に陥った銀三を案じ、警察に捜索を依頼する。
常川つねかわ
知者男性警察官(警部)官僚
役割協力者・脇役
銀三の捜索のために製氷所を訪れた警部。電力量計の動きから隠し部屋の存在を鋭く見抜く。
人物相関2件
宮地銀三勝子恋愛
自らの幻影に現れる運命の女として病的に執着する
暮松宮地銀三友人
昔からの親友であり事業を共に営む共同経営者
舞台
時代背景
昭和初期の冬
場所
東京の銀座・有楽町周辺および郊外の製氷所
国
日本
テーマ
- 異常な執着と狂気に彩られた倒錯した愛
- 生命を奪ってでも永続的な美を完成させようとする芸術的狂気
キーワード
氷幻影狂気地下室電力量計アラベスク