春三郎の兄・文太郎は田舎から上京し、弟の勧めで下宿屋「松葉屋」の経営を始める。春三郎は山本家の娘である照ちゃんと事実上の夫婦になっており、文太郎の妻・お金や子どもたちも合流して一家で下宿屋を切り盛りすることになる。しかし、不慣れで過酷な労働により照ちゃんはつわりと過労で倒れ、春三郎も病に伏せる。限界を感じた春三郎夫婦は松葉屋を出て独立し、春三郎は別の事業を始めて成功を収め、照ちゃんは娘を出産して平穏な生活を手に入れる。一方、文太郎夫婦は懸命に松葉屋の経営を続けるが、南京虫の発生や客離れにより経営は赤字続きとなる。身を粉にして働いた文太郎は激しい熱を出して倒れ、腸チフスと診断されて赤十字社病院に運び込まれる。春三郎は付きっきりで必死に看病するものの、文太郎は腸出血と腹膜炎を併発し、壮絶な苦痛に悶えながらこの世を去る。春三郎は冷酷な病院の環境と兄の遺体を前に、自身のこれまでの態度と不甲斐なさを深く恥じ、月明かりの下で出獄を控えた照ちゃんの兄・常蔵へと思いを馳せる。
役割主人公
文太郎の弟。兄に下宿屋の経営を勧めるが、自身は過酷な労働に挫折し別事業で成功を収める。後に腸チフスで倒れた兄の最期を看取り、自身の態度を深く反省する。
役割主人公・犠牲者
春三郎の兄。弟を尊敬し、田舎から上京して下宿屋「松葉屋」を経営する。赤字や南京虫の発生などの苦労に耐えながら懸命に働くが、最後は腸チフスで壮絶な死を遂げる。
役割家族・恋愛対象
春三郎の妻。当初は妊娠した体で下宿屋の過酷な手伝いを強いられ苦しむが、後に春三郎と共に独立して平穏な家庭を築く。
役割家族
照ちゃんと常蔵の母。苦労を重ねながらも、照ちゃんの出産や子育てを温かく支える。
役割家族・触媒
照ちゃんの兄。会社の委託金を使い込んだ罪を一人で被って投獄され、物語の背景で家族に影響を与える。
役割家族
文太郎の妻。田舎から子どもたちを連れて上京し、不慣れな下宿屋の女将として過酷な環境で働きながら次第に心を荒ませていく。
実の兄であり、上京と下宿屋経営を勧めた相手
共に暮らし、後に子供を設ける妻
妻であり、共に下宿屋経営で苦労を分かち合う
実の母親
実の兄
時代背景
明治時代中期(北清事変の時期)
場所
東京・猿楽町、神田錦町、本郷、渋谷周辺
国
日本
- 都会での立身出世を夢見る者の挫折と悲哀
- 家族間の依存と自立に生じるすれ違い
- 過酷な労働環境と病魔がもたらす無情な運命