歩む

戸田 豊子

青空文庫で読む
昭和前期東京日本小説
階級・貧富権力・反逆自我・正体愛・恋愛
あらすじ

主人公のとも子は、単調なカード整理の事務仕事に就きながら、自動車の運転手として働き労働争議に身を投じる兄の姿に影響を受けていた。ある日、とも子は社会主義者を自認する知識人の恋人・渡のアパートを訪れるが、彼の観念的な態度や女性関係のだらしなさに幻滅し、彼への愛が冷めつつあることを自覚する。郷里で小作争議が激化していることを伝える新聞を読んだとも子は、命がけで闘う農民たちと、今の停滞した自身の生活を比較して自己嫌悪に陥り、自らの存在意義を問い直す。数日後、警察による労働運動への弾圧が強まる中、連日の活動で疲労困憊した兄が熱を出してとも子の部屋へ転がり込んでくる。とも子はぐっすり眠る兄を休ませるため、深夜に訪ねてきた同志たちにも配慮し、翌朝兄を見送る。自らもビラ撒きを手伝いたいと申し出るが断られたとも子は、それでも晴れやかな気持ちを抱きながら、自身の働くビルディングへと毅然と歩みを進めるのだった。

登場人物7
とも子ともこ
求道者
女性事務員(カード整理)会社員

役割主人公

単調な事務仕事に就きながら自身の生き方を模索する若い女性。観念的な恋人に失望し、労働争議に身を投じる兄の姿に影響を受けて自己のあり方を見つめ直す。

平井ひらい
反逆者
男性自動車運転手労働者

役割家族・対照キャラ・師匠・導き手

とも子の兄。過酷な労働環境の中で労働争議の中心として奔走し、妹に対して実践的な闘争の姿を示す。

わたり
偽善者
男性知識分子知識人

役割恋愛対象・対照キャラ

とも子の恋人で社会主義者を自称する青年。しかし生活は観念的で女性関係にもだらしなく、とも子を失望させる。

山本やまもと
放蕩者
男性地主の息子富裕層

役割その他

とも子が過去に関係を持った大地主の息子。ニヒリストであり、とも子に階級の壁と地主の本性を実感させたが、現在は既に亡くなっている。

小母さんおばさん
守護者
女性労働者

役割脇役

とも子が住む長屋・アパートの階下の住人。娘の過酷な労働環境に心を痛めつつ、必死に生活を支える母親。

としちゃんとしちゃん
犠牲者
女性ガソリンガール労働者

役割脇役

小母さんの娘。百貨店の女給として過酷な労働で血を吐くほど体を壊し、現在はガソリンガールとして働いている。

竹田たけだ
反逆者
男性労働運動家労働者

役割協力者

兄の同志。深夜に兄を訪ねて密かに活動の打ち合わせをする男。

人物相関4
とも子平井家族

労働運動に身を投じる尊敬する兄

とも子恋愛

知識人的な欺瞞に失望しつつある恋人

とも子山本恋愛

過去に付き合っていた地主の息子

小母さんとしちゃん家族

過酷な労働で体を壊した娘を案じる

舞台

時代背景

昭和初期のプロレタリア文学隆盛期

場所

東京のアパートと市街地

日本

テーマ
  • 労働運動における実践と知識人の観念論の対比
  • 女性としての自立と欺瞞的な恋愛からの解放
  • プロレタリア的連帯への共感と自己覚醒
キーワード
争議知識分子地主小作人ビラ撒き