大学生の久能は、千駄木の青江の家に寄宿して執筆活動に励んでいた。同居する会社員の青江に対し、初めは嫌悪感を抱いていた久能だが、作家の妹・頼子からのリラの香りがする手紙を受け取ったことを機に、青江は彼に対して強い執着を見せ、献身的に世話を焼くようになる。久能が肺炎で倒れた際の看病を経て、二人の関係は深まる。しかしその後、久能は心当たりのない性病に罹患し、青江からの感染を疑い始める。青江は頑なに潔白を主張するが、久能は疑心暗鬼に苛まれ、彼女を執拗に問い詰めて心中未遂を引き起こすまでに精神を消耗させる。初夏、久能は薬の副作用で膀胱が破裂し、危篤状態に陥る。死を覚悟した久能は三ツ木を通じて青江を病院に呼び出し、自分を安心させるために真実を告白するよう哀願する。長きにわたる葛藤と沈黙の末、青江はかつて職探しの中で昔なじみの弁護士にホテルへ連れ込まれた過去を告白する。ついに追い求めた真実を聞いた久能は、青江が全く見知らぬ女のように感じられ、花束の香りに包まれながら奇妙な夢心地へと沈んでいく。
役割主人公
文学を志す大学生。同居する青江に初めは嫌悪を抱いていたが、次第に彼女の官能と献身に惹かれ、性病罹患後は猜疑心から破滅的な愛憎に陥る。
役割恋愛対象・犠牲者
久能の寄宿先で同居する会社員。久能に献身的に尽くすが、不貞を疑われて執拗な追及を受け、苦悩の末に過去を告白させられる。
役割脇役・触媒
久能の同人仲間。軽薄で遊び歩いており、久能に対して青江との関係をからかい、悪魔的な影響を与える。
役割対照キャラ・脇役
久能の同級生。真面目で通っているが、裏では性病に罹患しており、病院で再会した久能に自身の二面性を語る。
役割触媒・対照キャラ
作家である龍野の妹。リラの香りがする手紙を送り、久能にとって手の届かない理想化された存在となる。
寄宿先の同居人で、愛憎と強い猜疑心を抱く相手
一方的な憧れと理想を投影する対象
遊び仲間にして悪影響を与える存在
同級生であり、性病科の病院で秘密を共有する
時代背景
昭和前期
場所
東京・千駄木周辺、性病科の病院
国
日本
- 疑心暗鬼による愛と憎しみの葛藤
- 理想の女性と現実の女性の間の揺れ動き
- 真実を知ることの残酷さと虚無