十姉妹

山本 勝治

青空文庫で読む
大正関西日本小説
階級・貧富権力・反逆家族・血縁道徳・倫理
あらすじ

大干ばつと小作争議で極限まで疲弊した農村。農民運動に参加する青年・慎作は、地主側が暴力組織を雇ったという報告に闘志を燃やす同志たちを前に、自身の運動への情熱の衰えと一家の深刻な貧困に苦悩していた。多額の借金と養蚕の失敗に苦しむ中、かつて区長を務めた頑固な祖父は、巷で異常な流行となっている小鳥「十姉妹」の飼育によって一攫千金を狙うよう強硬に主張する。慎作は、農民としての地道な連帯こそが重要であり、投機的な流行に乗るべきではないと猛反対する。父・直造は慎作の思いを汲んで十姉妹の飼育を諦めたものの、その後、毎晩のように密かに外出するようになる。母の糸が田村の賭場への出入りを疑う中、ある夜、遊人風の男が直造からの手紙を持参する。そこには、家の金を使い果たした上にさらなる無心を乞う哀れな文面が記されており、直造が博打に手を出して破滅的な状況に陥ったことが明らかになる。

登場人物5
慎作しんさく
求道者
男性農民運動家農民

役割主人公

農民運動に身を投じる青年。同志たちが地主側と激しく対立する中、自身は家の貧困と運動への情熱の衰えとの間で深い葛藤を抱えている。

祖父そふ
狂信者
男性78農民農民

役割家族・対照キャラ

維新当時に区長を務めたことを誇りにする頑固者。家の窮状を脱するため、周囲で異常な流行となっている十姉妹の飼育による一攫千金を強硬に主張する。

直造なおぞう
没落者
男性農民農民

役割家族・犠牲者

正直一途にがむしゃらに働く慎作の父。息子に理解を示して十姉妹の飼育を諦めるが、借金返済の重圧から密かに賭博に手を出してしまう。

いと
守護者
女性主婦農民

役割家族

洗濯やほころび縫いに明け暮れる引込思案な慎作の母。夜な夜な外出するようになった夫・直造の賭場通いをいち早く疑い、心を痛める。

藤本ふじもと
反逆者
男性農民運動家農民

役割協力者

小作争議における慎作の同志。地主側が暴力的なならず者集団である白東会を雇ったことを激しい敵愾心とともに報告する。

人物相関5
慎作直造家族

父親。思想は異なるが互いに思いやりを持つ

慎作祖父対立

祖父。十姉妹飼育などの投機を巡って激しく意見が衝突する

慎作家族

母親。直造の不審な行動について相談を受ける

慎作藤本友人

小作争議を共に闘う同志

直造祖父家族

父親。高圧的な態度で十姉妹飼育を強要される

舞台

時代背景

大正から昭和初期にかけての干ばつの時期

場所

小作争議が起きている農村

日本

テーマ
  • 貧困と自然災害がもたらす農村の崩壊
  • 地道な連帯の思想と一攫千金の投機的流行の対立
  • 家族を救おうとする思いが引き起こす悲劇的な没落
キーワード
小作争議十姉妹干ばつ白東会賭場流行